PEOPLE
ビジョナリーな人たち Vol.68
泉 真弓
有限会社ほにや 代表取締役
高知市生まれ。京都の美術系短大を卒業後、1980年に雑貨店を開業。その後大手百貨店への卸し販売やよさこい祭りの衣装デザインなどを手がけ、2000年に有限会社ほにやを設立。一方、90年には自らよさこいチーム『ほにや』を発足させ、踊り子の育成やチーム運営を行う一方、県内外、また海外への遠征を通して、よさこいの魅力を伝えている。
『ほにや』が次に目指すもの――。
よさこいで全国に笑顔を届けたい
よさこい祭りで優勝五回を誇る常勝チーム『ほにや』。彼らが他の強豪チームと異なる点、それは年齢・性別問わず、踊りの上級者も初心者も一緒になって、楽しく踊るところだ。「それがお祭りの原点なんです」。代表・泉真弓さんがまとめ上げるチームワーク、そして見ている観客までもが楽しくなるような笑顔。そこに『ほにや』の強さの理由がある。
垣根を取り払って 誰もが自由に楽しく
高知の夏の風物詩にして、四国三大祭りの一つでもある、よさこい祭り。伝統あるこの祭りにおいて、過去九年間に五度も優勝を果たした強豪チームがある。その名は『ほにや』――。何やら聞きなれないこの言葉、「本当にそうだね」と相槌をうつ際に使われる土佐の昔言葉だそう。名づけ親は、チームの代表を務める泉真弓さんだ。 「実家が呉服屋だったことから、?和?の文化を絶やしたくないという思いがあり、?和?のテイストを普段使いできる商品を作ろうと、自ら和雑貨の店を開業しました。その店の名が『ほにや』。子供の頃、よくお婆ちゃんが私の話を『ほにや、ほにや』って頷きながら聞いてくれたんです。その温かい響きを、ものづくりにも反映させたいなって」 そんな彼女が踊り子として初めてよさこいに参加したのは高校生の頃。それまでは地元の祭りながら、若者が入りにくい垣根のようなものを感じ、遠目から見ているだけだったという。しかし初めて参加したチームは、大音量でロックを生演奏するなど型破りで、「とにかく楽しかった」と振り返る。「あれはよさこいではない」といった批判の声もあがったが、一方で若者を中心に熱烈に支持され、翌年以降、流行音楽を取り入れるスタイルが当たり前になった。よさこいは生き物のように進化をしてきたのだ。 「当時はまだ阿波踊りのような衣装だったんです。ところが、私が今の仕事を始めてしばらく経ったとき、あるチームから衣装づくりを依頼されまして。それがとても好評を得ました。そこからですね、私が本格的によさこい祭りに関わるようになったのは。その後、チーム『ほにや』を発足させ、衣装も音楽も踊りも、従来のものから一新。若者にもっともっと関心を持ってもらえるように。今度は、踊る人と見る人の垣根を完全に取り払って、一緒に祭りを楽しめるように、そして高知の誇りと思える祭りになるように、毎年、新しいことに挑戦しながら創ってきました。」 以後、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつ自分たちのスタイル「ほにや流」を築いていく。九八年、本祭で地区奨励賞を受賞したのを皮切りに、毎年のように入賞を果たし、そして二〇〇二年にはついに優勝に当たるよさこい大賞を射止めた。その後も四度の栄冠を手にし、今や『ほにや』はよさこいの顔として、圧倒的な人気を誇っている。
みんなで創りあげる プロセスが大事
現在メンバーは総勢一五〇名。小さな子供から五〇代に至るまで、顔ぶれもさまざまだ。
オーディションを行い、踊りの上級者しか受け入れないチームもある中、泉さんは決してそれを良しとはしない。よさこいを一生懸命、真面目に楽しむ人なら、誰でも大歓迎。「垣根を作りたくない」という発足当初のポリシーは、強豪チームになった今も変わらないという。
「本番が終わると、チームは一旦解散し、翌年にはメンバーが半分近く入れ替わります。だから最初はみんな不安げで、周りについていくだけで精一杯。でも、日夜練習を重ねることで、不安そうな表情が少しずつ、生き生きと明るくなっていく。本番にみんなの息がピタリと合った瞬間もとても感動的ですが、それ以上に、チームのみんなで一つのものを創りあげていくプロセスや、練習で頑張っている姿を見るのが、私は好きなんです」
今年のよさこい祭りに向けて、泉さんには一つの期する思いがある。もともとよさこいは、一九四六年に起きた南海地震と戦災からの復興がきっかけで始まった。だからこそ今年の開催には大きな意義があると。
「日本中に元気を与えられるような大会にしたい。今年のほにやのテーマは『夢渡来』。夢を持とう、夢に向かってトライしよう! そんなメッセージを高知から発信できればと思っています。私たちが踊ることによって、新しい輪や絆が生まれて、笑顔が生まれて、そして日本中に元気と感動を届けたい」
彼女は語り終えると、再び練習の輪に舞い戻っていった。よさこいは八月九日から。練習もいよいよラストスパートだ。今年もまた一五〇名のとびきり輝いた笑顔が、圧巻のパフォーマンスを披露してくれるに違いない。
<木村編集長の視点>
「ビジョナリーな人たち」始まって以来、初のダブルキャストである。片や乳業メーカー、もう一方が和雑貨とジャンルの違いこそあれ、地元高知にかける熱い思いは共に同じである。全国ブランドを前に、ややもすれば埋没しがちな地域から、そこならではの独自性のある商品づくりや、地元高知の情報の発信に励む姿も共通している。「楽しく!」という言葉が、まるで申し合わせたかのようにお二人の口から出てきたのにも驚いた。出会う人達も皆が明るい。客観的なデータだけでは決して測れない、ポテンシャリティに溢れた本当にいい街である。さすが、あの龍馬を生んだ土地だけの事はある。早速、「ほにや」で買った扇子を持ちながら「よさこい」を見て、もう一度「ひまわり牛乳」を飲みながら「ラ・ラ・ラ音楽祭」へ出掛けることにしよう。でも、スケジュールは大丈夫なのだろうか? いささか心配になってきた。。
平成23年7月1日発行(通巻69号)
編集長 木村政雄/アートディレクション&デザイン 額賀剛治/デザイン 北川原由貴
カメラ 花井智子/ライター 茂木貴生/制作進行 池田大作
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