PEOPLE
ビジョナリーな人たち Vol.69
吉澤文治郎
ひまわり乳業(株)代表取締役社長
1961年高知市生まれ。早稲田大学商学部卒業後、岡山大学農学部で発酵学を学び、85年ひまわり乳業に入社。製造、営業、企画、管理などの仕事を経験し、99年に専務取締役に就任。2005年に代表取締役社長に就任。一方、中学・高校ではブラスバンド部に所属し、その後ジャズバンドを結成。2002年には高知街ラ・ラ・ラ音楽祭を立ち上げた。
南国土佐に咲いた大きなひまわりの花。
牛乳づくりと音楽を通じて、人々に笑顔を!
「自然と健康と地域」を旗印に掲げ、 地元高知の人々に愛され続けてきた"ひまわり牛乳"。四代目社長の吉澤さんは今、そんなローカルブランドを日本全国に羽ばたかせるために、積極的な商品開発やPRを進めている。その原動力は、「愛する高知のポテンシャルを多くの人たちに知ってもらいたい」という想いだ。彼の牛乳づくりに懸ける情熱に迫った。
他社がやらないこと できないことに挑戦
大地にしっかりと根を張り、太陽に向かって真っ直ぐ伸び、やがて大輪の花を咲かせるひまわり。南国高知に本社を置くひまわり乳業は、大正一一年の創業以来、地元の人たちから?ひまわりさん?の愛称で呼ばれ、親しまれてきた。そんな地域密着型の小さな牛乳メーカーが今、生産者の見える商品づくりと斬新な商品開発によって、高知県はもとより四国全域、中国地方、さらには関西や関東圏にまで販売網を拡大している。
その中心にいるのが、四代目社長・吉澤文治郎さんだ。子供の頃から毎日食卓に牛乳が並び、おかげで人一倍健康だったという。生家が工場の敷地内にあったため、従業員たちと寝食をともにし、いわば会社と一緒に成長した。ひまわり牛乳への愛着は誰よりも強い。
「牛乳業界は消費量の減少や輸入の自由化などによって、とても厳しい状況に置かれています。特に我々のような中小メーカーは熾烈な価格競争の中で悲鳴をあげる毎日です。私自身、四年前に社長に就任してから、ずっと苦労が絶えません(笑)。でも、当社でしか作れない牛乳があるはず、いや必ずあるんだと信じてやってきました」
大手と対抗するために、いかに商品を差別化するか。社員一丸となって日夜試行錯誤を繰り返し、そして生まれたのが『乳しぼりをした日がわかる低温殺菌牛乳』だった。地元の酪農と専属契約を交わして、自社のタンクローリーで直接集乳。これにより乳搾りからわずか三日後には店頭に並ぶ。さらに搾乳日が表示されているのも業界初だ。これぞ地域密着型メーカーならでは、大手他社には絶対真似できない。
一方、同社では牛乳以外の商品開発も積極的に進めている。商品ラインナップは全部で一二〇種類。これも中小乳業としては破格の数である。人気のヨーグルトは、青汁・生姜・トマト・柚子・文旦、さらにはソユーズで宇宙を旅した乳酸菌で作った、その名も『宇宙を旅したヨーグルト』など。また飲みやすい青汁ドリンク『健康青汁 菜食健美』も好評だ。
「当社の開発テーマは、自然と健康と地域。これに合致したものであれば、迷わず商品開発を始めます。他社がやらないこと、できないことに挑戦する。高知のポテンシャルを最大限に発揮させる。それが私のポリシーです。そして何より、我々自身が楽しむこと。作り手側が楽しんでいないと、お客様にも喜びは伝わりません。ですから、企画会議でも社員の楽しい発想はできるだけ潰さないように心掛けています」
吉澤さんには社長業と並行してもう一つ、情熱を注いでいることがある。学生時代からジャズバンドでサックスを担当するなど音楽好きな彼は、二〇〇二年、高知のまちに活気を取り戻すため、?高知街ラ・ラ・ラ音楽祭?を立ち上げた。個人や企業から実行委員会に寄せられた寄付金、協賛金によって運営される、まさに市民による市民のための祭りだ。高知市の帯屋町を中心とした複数の屋外ステージでさまざまなジャンルのミュージシャンが自由に演奏を繰り広げ、当日まちは音楽一色になる。今年で一〇回目を迎え、祭りの名は地元にすっかり定着した。
「よさこい祭りと同じように、地域の人たちが自主的に立ち上げた、何ものにも縛られない自由なお祭りです。まずは自分たちが楽しむことで、自然と人が集まってくる。基本精神は牛乳づくりと一緒。僕は高知のまちに育てられました。だから牛乳と祭りの両面で、愛する高知を元気にしていきたいんです」
今後も牛乳づくりや音楽祭を通じて、高知の魅力、ポテンシャルを四国の外にどんどん発信していきたいと語る吉澤さん。「すべては高知のために」――その溢れるバイタリティは、栄養の詰まった美味しい牛乳と深い郷土愛の賜物だ。
岡埼誠也(高知市長)
高知を訪れた方が皆さん口を揃えるのは、「高知は人がいい」と。例えば屋台に座れば、「どこから来た?」「ここはおでんがこじゃんと旨い」「これ食べてみいや」と気さくに声をかけてくれ、周りのお客さんとすぐに仲良くなれます。"おせったい"の気持ちが強いんですよ。これが行きすぎると"おせっかい"になるのですが(笑)。その中間、ちょうどよい距離感なんです。
高知は酒文化の盛んな土地柄なため、ラテン気質でみんな気さく。思ったことをどんどん言いますが、そのかわり表裏がありません。男性は"いごっそう"と呼ばれ、気骨があり、一方女性は、お父ちゃんが酒ばかり飲んでいるので非常に働き者で"はちきん"と呼ばれてます(笑)。
そんな高知人ですから、まちも非常に活気が溢れています。街中には市が並んでいるのですが、特に350年の歴史を誇る日曜市は盛大で、高知城から約1kmに渡って500店舗が軒を連ね、"人間"以外は何でも売っているほど。ぜひお立ち寄りいただきたいですね。また、ひまわり乳業の吉澤社長が立ち上げた"高知街ラ・ラ・ラ音楽祭"も盛り上がっています。私自身、学生時代にジャズバンドでベースを弾いていたほどの音楽好きですから、高知を音楽で活性化させるという彼らの考えには大いに賛同します。行政発でなく、市民が中心となって自分たちで楽しむ。それもまた高知人らしい魅力であり、力なのです。
平成23年7月1日発行(通巻69号)
編集長 木村政雄/アートディレクション&デザイン 額賀剛治/デザイン 北川原由貴
カメラ 花井智子/ライター 茂木貴生/制作進行 池田大作
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